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2019年07月01週
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 ブロードウェイミュージカル「ON THE TOWN」の企画・制作が始まったのは、1944年で、実際の上演は1995年になってからです。その時のアメリカは、ヨーロッパ戦線では、ドイツと闘い、太平洋では日本と闘う戦時下でした。戦時下でも、歌って、踊って、泣いて笑うミュージカルが企画・制作そして上演されていたのです。
 1944年9月から、パラオ諸島、ペリリュー島で始まった攻防戦で、およそ10,000人の日本兵が死守・全滅し、死体は島の至るところで設置されていました。1,500人が死んだとされるアメリカ兵は、そのすべてが死体処理班によって回収されました。戦死者の一人も放置しないアメリカと戦争の仕方が違っていたのです。そんな違いの一つが、生み出したのが、ブロードウェイミュージカル「ON THE TOWN」でした。
 たとえ戦争であっても、そうしてのびのびと「歌って、踊って、泣いて、笑う」普通の人たちの普通の生活がないがしろにされることはありませんでした。
 「ON THE TOWN」の製作者の一人、バーンスタインの友人のベティ・コムデンが、公演開始直後に以下のようなコメントをニューヨーク・タイムズに寄せて、制作の意図を語っています。
 「…もっとも重要なのは、3人の水兵、わたしたちは、彼らに人間らしさを与えたかった。どんなに突飛な扱いをされても、この3人は海兵隊員としての立場を忘れてはならない。初めて大都会にやって来て、娯楽と愛を探し求めながらも、戦争という状況がもたらすプレッシャーにさらされないわけにはいかない―それが、彼らの立場なのだ。とはいえ、本作の目的はこの点について云々することではない。観客の皆さんは現在の状況のなかで生み出される限りの楽しみを味わっていただけたらと思っている」(この時のコムデンの夫も戦地にいた)。
 そんな一方で「ON THE TOWN」は、「戦時下のアメリカにおける女性の役割の変化を反映すること」も忘れていません。これは、バーンスタインが、音楽作品を生み出すときの基本にもなっています。時代や状況から離れて作品を生み出す人ではなかったこと、それがバーンスタインの作品に一貫して貫かれている制作態度であったことは、後の代表作「ウエスト・サイド・ストーリー」も同様です。
 「心の底から揺さぶられるショー…都会のジャングルを思わせる物騒な雰囲気の中に、哀れをもよおす柔和で寛容な精神が独創的な企画に専心したとき、全員がその実力を最大限に発揮する。これはそうした特別な場面なのだ。主題は、美しくはない、しかし「ウエスト・サイド・ストーリー」がそこから引き出してみせたのは、美しい。それは、この作品が、深い洞察の視点をもっているからである」(以上、引用は、「バーンスタインの生涯」(著:ハンフリー・バートン、訳:棚橋志行/青土社)。
 佐渡 裕さんのプロデュースし、兵庫県立芸術文化センターで上演されたもう一つのバーンスタインの作品が「キャンディード」です。恐らく、多くの人たちは「キャンディード」が、「啓蒙思想」の巨人と言われたヴォルテール(1694~1778)の「カンディード」が素材になった作品であったことを周知し、その作品にさかのぼって「キャンディード」のチケットを購入するということはなかったはずです。
 「カンディード」が「キャンディード」になって、ブロードウェーで上演することは、バーンスタインにとっても挑戦であったはずです。それを挑むのがバーンスタインだったのです。
 「…カラヤンは伝統の頂点を極めたが、バーンスタインは破壊しながら自分の方法で世界を征服した革命児である。自己を神格化したのがカラヤンなら、バーンスタインは何もかもさらけ出して、そしてみんなに愛されるスターだった」(岩城宏之、KAWADE夢ムック、2014)。
 そんな、バーンスタインの挑戦が、「キャンディード」を経て、「ウェスト・サイド・ストーリー」につながって行きます。

「風刺作家のジョン・ウェルズが述べたように、この作品は『ページをめくるたびに読者は新たな国へ案内され、段落ごとに新しい冒険がある』。この作品は、カトリック教会に対する、はたまた哲学者ライプニッツの毒にも薬にもならない楽観主義に対する皮肉にみちた攻撃にあふれている。そこがヘルマンとバーンスタインには、わが世の春を謳歌するアイゼンハワーのアメリカへの反逆として使えると思えたのである。しかしながら、ヴォルテールが哲学を『理想のうちでも最たる理想のため』のものとしてあざけったことも、戦争や貪欲、欺瞞、快楽、俗物根性や虚言を文明化の必要悪と受け止めたことも、三十章にも細分された、四コマ漫画的な簡潔な構成と、短くて鋭い文章があったればこそ成功につながったのである」
「だが新しい形式を予言したバーンスタインの言葉は正しかった。彼が手がけていたもう一つのミュージカルは、優れて独創的な作品だったからだ。これを「オペラ」と呼ぶことはできない。この作品は、バーンスタインがテレビではほとんど触れなかった要素――ダンスが物語の展開に創造的な役割を担っているからだ。その作品とは、現代の悲劇『ウェストサイド物語』であり、これが舞台に載せられた1957年は、バーンスタインのアメリカにおける名声が頂点に近づく都市でもあった」
「ロビンズは、『ウェストサイド物語』をどのジャンルに分類するかについては、いささかの迷いもなかった。『あれはアメリカン・ミュージカルだ。50年代半ばでの目標は、わたしたち全員が――‟クラッシク″音楽を書いていたレニーと、純粋演劇を作っていたアーサーと、正統派のバレエを踊っていた私と、本格的に絵を描いていたオリヴァー・スミス――が全員、自分の分野の芸術をもちよって、大衆劇場の舞台に乗せられるものかどうかそれを知ることだった……。高尚な芸術に打ちこんでいたわたしたちが真摯に試みて、一篇の詩を作りあげる、主要な目的はそこにあったんだ』ロビンズにとって、これは『ミュージカル』だった」

 昨年、佐渡 裕さんは、大阪ではフェスティバルホールで、映画「ウェスト・サイド・ストーリー」をスクリーンで上映し、途中思いを語りながら、音楽は日フィルの演奏、ご自身の指揮という、とってもぜいたくなコンサートを計画、実施しました。

 佐渡 裕さんがプロデュースしてきた、芸文でのオペラ(今年はミュージカル、オン・ザ・タウン)では、公演の始まる前日に地域の西北活性化協議会の主催で、「前夜祭」を実施してきました。その前夜祭で、佐渡 裕さんの提案で、「近隣の中学校」の吹奏楽部の生徒が、開会のファンファーレを演奏します。兵庫県立芸術文化センターの音楽監督としての仕事の課題、使命の一つとしておられるのが、青少年の音楽へのいざないです。現在、芸術監督をしておられるオーストリアの、ニーダーエイスタライヒ州のトーンキュンストラーでも、そんな佐渡 裕さんの仕事・使命が期待され、そして存分にその働きをしておられます。
 前夜祭での中学生のファンファーレは、集まった人たちを、その若々しさで魅了してきました。そこには、佐渡 裕さんの、災害の被災地への強い関心がつながって、丹波篠山市立篠山東中学校の生徒も加わっています。
 中学生たちは、前夜祭の日程より事前に、合同練習を行ってきました。紹介している資料は、昨年の合同練習の折の佐渡 裕さんと中学生の対話の記録です。そこからは、佐渡 裕さんの、中学生、青少年への強い関心を読みとることができます。これらのことで、佐渡 裕さんと話す機会がありましたが、その時に口にされたのが、バーンスタインの「ウェスト・サイド・ストーリー」です。佐渡 裕という人が「師匠」であるバーンスタインから、その核心部分を学んでおられることを、強く示唆される思いでした。
 「…主題は、美しくはない、しかし『ウェスト・サイド・ストーリー』がそこから引き出して見せたのは、美しい。それは、この作品が、深い洞察の視点をもっているからである」(前掲書)。

参考資料
1、「カンディード」(著:ヴォルテール、翻訳:植田 祐次/岩波書店)
2、「『カンディード』<戦争>を前にした青年 (理想の教室) 」(著:水林 章/みすず書房)
3、「バーンスタインの生涯上・下」(著:ハンフリー・バートン、翻訳:棚橋志行/青土社)
4、「レナード・バーンスタイン」(著:ポール・マイヤーズ、翻訳:石原 俊/アルファベータブックス)
5、「バーンスタイン: アメリカが生んだ偉大な指揮者 (KAWADE夢ムック 文藝別冊)」(河出書房新社編集部/河出書房新社)
6、「レナード・バーンスタイン ザ・ラスト・ロング・インタビュー」(著:ジョナサン・コット、翻訳:山田治生/アルファベータブックス)
7、「棒を振る人生」(著:佐渡 裕/PHP研究所)
8、CD「バーンスタイン:オン・ザ・タウン(オリジナル・キャスト・レコーディング)」(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)
9、DVD「ウエスト・サイド物語」(20世紀フォックスホームエンターテインメント)
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